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大阪地方裁判所 平成7年(行ウ)73号 判決 2000年9月28日

原告 越田義彦

被告 豊能税務署長

代理人 長崎正治 原田一信 ほか四名

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が原告に対し、平成五年一〇月二〇日付でした

一  平成二年分以降の青色申告承認の取消処分

二  平成二年分及び同三年分の所得税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分(ただし、平成三年分は異議決定により取り消された後のもの)並びに平成四年分の所得税の更正処分及び重加算税の賦課決定処分(ただし、裁決により取り消された後のもの)のうち、別紙A<略>記載の原告主張額欄記載の各金額を超える部分

三  平成二年分ないし同四年分の消費税の各更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の各賦課決定処分(ただし、平成三年分は異議決定により取り消された後のもの)のうち、別紙B<略>記載の原告主張額欄記載の各金額を超える部分

をいずれも取り消す。

第二事案の概要

一  前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実)

1  原告は、平成二年から同五年までの間、大阪市淀川区西宮原二丁目六番二〇号新大阪シティコーポ四〇八号室(以下「淀川区の居宅」という。)を住民票上の住所地とし、別表1<略>記載のとおり、レンタル・個室ビデオ店、ランジェリー販売店、おとなのおもちゃ販売店、カラオケパブ店、カラオケボックス店、宝石小売店を営むかたわら、別表2<略>記載のとおり、不動産賃貸業を行い、昭和六二年分以降、当時の所轄税務署長であった東淀川税務署長から青色申告の承認を受け、同税務署長に対し、確定申告をしていた者である。

また、原告の妻である越田敬子は、大阪府豊中市東豊中町二丁目一一番一一号の居宅(以下「豊中市の居宅」という。)に居住し、別表1<略>記載のとおり、原告とは別の申告名義人として、レンタル・個室ビデオ店を経営し、被告に対し、確定申告をしていた者である。

2(一)  原告は、平成二年分ないし同四年分の所得税及び消費税(以下、それぞれ、「本件所得税」、「本件消費税」という。)について、東淀川税務署長に対し、別紙C及びD<略>の「確定申告」欄記載のとおり確定申告をした。

(二)  東淀川税務署長は、平成五年一〇月二〇日付で、原告に対し、平成二年分以降の青色申告承認の取消処分(以下「本件取消処分」という。)をした上で、別紙C及びD<略>の「更正処分等」欄記載のとおり、本件所得税、本件消費税についてそれぞれ更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分(以下、同一年分の所得税又は消費税に係る更正処分並びに過少申告加算税及び重加算税の賦課決定処分を併せて「更正処分等」といい、本件所得税及び本件消費税についての更正処分等を総称して「本件各処分」という。)をした。

(三)  原告は、本件各処分につき異議申立て及び審査請求を行ったが、その結果は、別紙C及びD<略>記載のとおりである。

(四)  なお、原告は、平成五年一二月、その住所地を従前の大阪市淀川区から大阪市天王寺区に移転したため、国税不服審判所長は、原処分庁を天王寺税務署長として審査請求に対する裁決を行ったが、原告は、右裁決に先立つ平成七年三月に豊中市の居宅に住所を移したので、所轄税務署長は被告となった。

3  原告の平成四年分の所得税に係る更正処分等については、不動産所得については争いがなく(別紙A<略>)、事業所得金額の推計課税の必要性及び合理性が争点である(争点2、ただし、原告の営業していた店舗のうち六角ビデオ以外の店舗の売上高又は収入金額(別表4の<3><略>以外の売上(収入)金額)は争いがない。)。

4  平成二年分及び同三年分の所得税に係る更正処分等については、右各年分の不動産所得、平成三年分の総合短期譲渡所得は争いがなく(別紙A<略>)、右各年分の事業所得金額の推計課税の必要性及び合理性が争点である(争点3、ただし、六角ビデオ以外の店舗の売上高又は収入金額(別表4の<3><略>以外の売上(収入)金額)は争いがない。)

5  本件消費税に係る更正処分等については、六角ビデオ以外の各店舗の売上高並びに不動産貸付及び不動産譲渡による売上高が別表21ないし23<略>記載のとおりであることについて争いがない。各店舗における売上についての控除対象仕入税額について争いがある(争点4)。

二  争点及び当事者の主張

1  青色申告承認取消処分の適法性

(一) 所得税法一五〇条一項一号該当性

(1) 被告の主張

青色申告の承認を受けた納税者は、大蔵省令で定めるところにより、適式に帳簿書類を備え付けてこれに取引を記録し、かつ当該帳簿書類を保存すべき義務を負い(所得税法一四八条)、納税者が右義務を履行しない場合には、所轄税務署長は、その承認を取り消すことができる(同法一五〇条一項一号)。そして、帳簿書類が提示されないと、備付け等の有無を確認できないことなどに照らすと、所得税法二三四条の質問検査権の行使に対して納税者が正当の理由なく帳簿書類の提示を拒否した場合も、右の取消事由に該当すると解すべきである。

大阪国税局課税第一部資料調査第二課、同第四課、東淀川税務署及び豊能税務署所属の職員ら(以下「被告職員ら」という。)は、平成五年四月二六日、原告及びその妻の所得税及び消費税についての調査(以下「本件調査」という。)を行うため、豊中市の居宅、淀川区の居宅、原告の妻の所有する大阪市中央区高津三丁目一五番一〇号朝日プラザ夕陽ヶ丘Ⅲ二〇二号室の事務所(以下「旧千日事務所」という。)、原告の経営するランジェリー千日、ステージ千日、ビデオレンタル千日、六角ビデオ、キャンディラブの各店舗及び原告が昭和六二年から所有している大阪市淀川区西宮原一丁目八番三八号ハイマート第二新大阪四〇三号に、それぞれ臨場した。その際、被告職員らは、旧千日事務所において、原告に対し、原告の事業に関する帳簿書類の提示を求めたにもかかわらず、原告は、平成二年分の振替伝票、同三年分及び四年分の振替伝票及び総勘定元帳のみを提示し、それ以外の帳簿書類及びその作成の基となった領収書等の証ひょう書類を提示せず、証ひょう書類の保管場所を知っていた原告の事務員に「しゃべるな。何も答えんでいいから、黙っていろ。」などと指示した。その後、被告職員らは、本件各処分を行う直前に至るまで、原告に対し、帳簿書類等の提示を求めたが、原告はこれに応じず、従業員にも調査に協力させなかった。

このような原告の行為が、所得税法一五〇条一項一号に規定する青色申告承認取消事由に該当することは明らかである。

(2) 原告の主張

質問検査権はいわゆる行政調査を認めるものにすぎず、強制調査を認めるものではない。青色申告の承認を受けている者が帳簿書類の「調査に応じない場合」には、所得税法一五〇条一項一号所定の青色申告承認取消事由に該当するとしても、ここにいう「調査に応じない場合」に当たることを安易に認めることは、質問検査権に強制調査権を認めたのと同様の結果になり、法の趣旨に反する。

本件において、被告職員らは、平成五年四月二六日、事前の連絡なく原告の就寝中に原告の自宅(豊中市の居宅)の玄関を何ら原告の了解を得ることなく開いて、いきなり建物内に侵入してきた。これに驚いた原告が、当時税務代理を依頼していた細谷陸雄税理士に対して相談のため連絡をとっており、自宅には何ら事業に係る関係書類は置いていない旨述べ、調査に協力するとは回答していないのに、勝手に引出等を開けて衣類、下着等に至るまで取り出したりしたもので、右調査は質問検査権の範囲を超えた違法なものである。

そして、原告が午前一一時頃、職場に行きたいとして自宅を出たところ、被告職員らが無理矢理原告の車に乗り込み、車中においても原告の了解なく車両の荷物入れなどを開けてその内容物を取り出したり、記録にとどめたりし始めたので、原告が抗議をしたが、被告職員らはこれを無視して調査を強行する態度を見せたため、原告が質問に対する回答を拒否したものである。

旧千日事務所における被告職員らの調査も原告の了解を得ておらず、原告は、原告の知らない文書(<証拠略>)について自分が書いたものではないから分からない旨正直に回答したにすぎないし、原告は、淀川区の居宅に臨場することを断ったにもかかわらず、無理矢理同行させられた。

被告職員らは、同日午前一一時頃、原告の従業員である濱名久美子宅に臨場したが、その際も、勝手に部屋の中まで侵入し、机、引出しや箪笥、押入れまで開けて中の物を出すようなことをし、濱名宅に原告が置き忘れた鞄(現金三〇〇万円のほか、銀行発行の預り証等の書類が入っていた。)を預り証も書かないまま持ち出し、原告が後日これを知って抗議を申し入れたにもかかわらず、被告職員らは、まともに回答しようともせず、一方的に調査を強行しようとするため、原告は調査に対する協力をいっさい断ることとしたものである。

被告職員らは平成五年四月二七日にも豊中市の居宅に臨場し、強引に原告を淀川区の居宅に同行させた。

原告は、平成五年六月二四日、細谷税理士事務所において、同税理士ら立会のもと、被告職員らと面談したが、被告職員らは、原告から持ち去った資料等を何ら持参、提示することなく、質問を続行し記録にとどめようとしたため、原告は、資料を見ないと正確な答えができないから記録にとどめられても困る旨述べたものである。その際、被告職員らから指示を受けた事項については、原告は後日文書で回答している。右回答の内容の一部は本訴に至るまでの異議決定等においても真実と認められているところである。

以上のように、本件調査は、原告の意に反して強行されたもので、任意調査の域を超えており、原告には応答義務や受忍義務はない。原告がこれに協力しなかったからといって、前記の「調査に応じない場合」に当たらず、所得税法一五〇条一項一号所定の事由に該当しない。

(二) 所得税法一五〇条一項三号該当性

(1) 被告の主張

原告は、原告の経営する店舗のうち、六角ビデオにおける売上げを、夕方の一定時間以降の売上げを除外して過少に記帳し、キャンディラブにおける売上げも、売上点検表を改ざんする等して、一日当たり五万円ないし一〇万円の売上げを除外して過少に記帳していた。また、原告は、不動産所得について、賃貸物件の一部しか申告していなかった。

よって、原告は帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載していたのであるから、所得税法一五〇条一項三号に該当する。

(2) 原告の主張

帳簿書類に取引の一部を隠ぺいし又は仮装して記載していても、帳簿書類の記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由がなければ所得税法一五〇条一項三号には該当しないと解すべきである。

原告が売上除外をしていた事実は認めるが、これは原告の営業店舗及び賃貸店舗のごく一部について行っていたものにすぎず、帳簿書類の記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があるものではないから、青色申告承認処分取消事由に当たらない。

2  平成四年分の所得税に係る更正処分等の適法性

(一) 被告の主張

(1) 推計の必要性

争点1について主張した述べたとおり、原告は本件調査に協力せず、特に、六角ビデオについては、午後六時から閉店までの売上金額が除外されていたのであり、真実の売上金額を裏付ける売上点数集計表や原始帳票等も存在しなかったのであるから、原告の事業所得を実額計算することができず、推計の必要性があることは明らかである。

(2) 推計の方法とその合理性

<1> 六角ビデオの売上高

六角ビデオの売上高については、以下の資料がある。

ア 平成五年一、二、四月についての売上点数集計表(乙一四の一六枚目、一八枚目、二一枚目)

これは、六角ビデオにおける売上部門(「ルーム」、「レンタル」、「延滞」、「ダビング」、「生テープ」、「会員」、「販売テープ」)ごとに、開店から午後六時までの顧客数と午後六時から閉店までの顧客数を「点数」として記載したもの。六角ビデオ店内にあったものである。

イ 平成五年四月二二日から同月二五日について開店から午後六時まで(<証拠略>)と午後六時から閉店まで(<証拠略>)に分けて売上金額と顧客数を記載した売上伝票

これは、六角ビデオ店長松林謙一宅にあったもので、これに記載された顧客数は、アの売上点数集計表の点数(乙一四の二一枚目の二二日ないし二五日の数字)と一致する。

ウ 部門別売上点数集計表(乙一四の二四ないし二九枚目)

これは、六角ビデオの店員兼子誠宅にあったもので、これに記載された点数は、アの売上点数集計表に記載された点数を月毎に合計した数と一致するから、開店から閉店までの売上点数を売上部門ごとに集計したものである。

エ 売上集計表<証拠略>

これは、旧千日事務所において把握したもので、原告の申告のもとになったものであり、開店から午後六時までの売上点数と売上高を記載してある。

以上の資料が存在することを前提とすると、六角ビデオの売上高は次のとおり推計するのが合理的である(別表5<略>)。すなわち、平成四年分の売上集計表により開店から午後六時までの売上点数の合計(売上集計表の「数」欄の合計、各合計点数は別表5の<2><略>欄)と各売上部門の売上金額(各金額は別表5の<1><略>欄)を算出した上、各売上部門の一点当たり平均売上金額(別表5の<3><略>欄の数字、以下「部門別平均単価」という。)を求め、これに、開店から閉店までの売上点数を記載した部門別売上点数集計表記載の各部門合計点数(別表5の<4><略>欄)を乗じれば、各売上部門別に開店から閉店までの売上金額を推計することができる。

<2> 売上原価 別表4の<1>ないし<6><略>の売上原価欄記載のとおり(争いがない。)。

<3> 必要経費 別表4の<1>ないし<7><略>の必要経費欄記載のとおり。

利子割引料について争いがあるが、原告が申告した利子割引料のうち、昭和六三年八月に借り入れた一億円に係る部分については、これに対応する事業用資産の購入が認められず、また、その資金使途が不明であることから必要経費と認めることができない。したがって、右一億円の借入れに係る利子割引料について、原告が申告した利子割引料から減算すべきである。

<4> 以上によれば、平成四年分の六角ビデオの売上金額、売上原価、必要経費は別表4<3><略>欄記載のとおりとなり、同年分の原告の事業所得の金額は、同表及び別表3<略>の所定欄記載のとおり推計される。

(二) 原告の主張

(1) 被告が推計の資料として用いた部門別売上点数集計表(乙一四の二四ないし二九枚目)は、原告の全く知らないものであり、同表を含む乙一四の成立過程には疑問がある。被告は、売上点数集計表(乙一四の一六枚目、一八枚目、二一枚目)は六角ビデオの店内で発見されたと主張し、部門別売上点数集計表(乙一四の二四ないし二九枚目)は六角ビデオの店員の兼子宅で発見されたと主張するが、これら乙一四は「緑ファイル」とされる一冊のファイルなのであり、同一ファイルが二箇所から押収されることはあり得ない。更に、乙一四の二枚目では何故か同ファイルの「保管場所」も記載されていない。原告は本訴に至るまで緑ファイルの内容の開示も受けていない。

(2) 乙一四には物理的に不可能な数値又は過大な数値が記載されている。

<1> ルーム部門

六角ビデオの午後六時以降の売上高について売上除外がされていたことは原告も認めるが、同店の閉店時刻は午後一〇時三〇分であるから、その間の営業時間は四時間三〇分である。ルーム部門は一時間単位で料金が設定されているから、右時間帯における顧客回転は、単純計算しても四・五回転であり、実際には、客の退店後に清掃やビデオ及びビデオデッキの点検が行われるため、四回転するのが最大である。六角ビデオのルーム数は九室であるから、午後六時から閉店まで満室の状態が続いたとしても、四点×九=三六点(売上高にして五万七六〇〇円)を超えることは物理的にあり得ない。ところが、被告による売上推計の根拠資料とされた売上点数集計表(乙一四号証一六枚目、一八枚目、二一枚目)では、午後六時以降の売上点数として、この物理的限界値を超えた点数の記載が散見され、右資料の信用性には疑問がある。

原告は、平成六年一月ないし四月の期間において、ルーム部門の実績値を記録したみたところ、平均して二〇・八六点程度にすぎない。

<2> テープ販売部門

この部門については、物理的限界値というものは存しないが、平成六年一月ないし四月の期間において実績値を記録してみたところ、平均して四・四四点程度にすぎず、売上点数集計表(乙一四号証一六枚目、一八枚目、二一枚目)の記載には信用性がない。

(3) 被告の主張によれば、六角ビデオの開店から午後六時までの売上高は、開店から閉店までの全売上高の四九・〇三パーセントとされるが、平成六年一月ないし四月の実績数値からすると、六〇・六五パーセントである。

(4) 必要経費のうち利子割引料について

平成四年分の必要経費のうち利子割引料について、被告は本訴において、一三二万〇八二二円と主張しているが、国税不服審判所に対する審査請求手続においては一九三七万七一〇八円と主張し、裁決もこれを前提に行われていた。被告の右の主張の変遷は不可解であるばかりか、裁決の拘束力にも反する。

3  平成二年分及び同三年分の所得税に係る更正処分等の適法性

(一) 被告の主張

(1) 推計の必要性

争点1において述べたとおり、原告は本件調査に協力しなかったし、原処分庁(東淀川税務署長)の把握した資料からは、原告のすべての取引先について反面調査をすることもできなかったため、原処分庁は、右各年分の事業所得の金額について実額計算することができなかった。したがって、推計の必要性があることは明らかである。

(2) 推計方法とその合理性

右各年分の事業所得の金額は、まず、原告が経営する各店舗の平成四年分の所得率(別表10<略>、各店舗の売上金額に占める、後記イのとおりの調整後の各店舗の所得金額の割合)を求め、これを平成二年分及び同三年分の各店舗の売上金額に乗ずることにより算出する(別表8、9<略>)こととした。この方法は、推計の対象とした各店舗の営業実態がそれぞれの年を通じて類似していることに照らして、合理的である。

<1> 平成四年分の所得率の算出方法は次のとおりである。

ア 各店舗の売上金額、売上原価、必要経費の区分

平成四年分の各店舗の売上金額は、別表4<略>のとおりであり、六角ビデオを除き、当事者間に争いがない。

売上原価の区分は、総勘定元帳、振替伝票、取引先への反面調査によった。

必要経費の区分は、総勘定元帳、振替伝票によった。右各資料によって各店舗への区分ができなかった必要経費(以下「共通経費」という。)は、平成四年分の総収入金額(雑収入は除く)に占める各店舗ごとの売上金額の割合(以下「売上構成割合」という。別表11<略>)により区分した。

なお、以下の費目は以下のとおり。

A 減価償却費

原告の平成四年分の青色申告決算書、総勘定元帳、異議申立ての際に原告から提出されたピアピア及びキャンディラブに係る工事関係書類等により区分した。また、右勘定科目に係る共通経費については、売上構成割合に基づき各店舗へ区分した。

B 給料賃金

給与明細書兼給料台帳に基づいて区分した。

C 福利厚生費

原告の平成四年分の総勘定元帳及び振替伝票を基に区分した。

なお、右勘定科目に係る共通経費については、各店舗毎の給料賃金の総給料賃金に占める割合(以下「給料賃金構成割合」という。別表12<略>)により区分した。

D 地代家賃

原告は、ピアピアに係る地代家賃をキャンディラブの地代家賃に含めて計上していたので、両店舗に係る地代家賃を区分した(別表13<略>)。

E 利子割引料

右金額の各店舗への区分は、原告の平成四年分の総勘定元帳及び振替伝票に基づいて行った。

また、右勘定科目に係る共通経費については、各店舗毎の売上構成割合(別表11<略>)により区分した。

なお、原告が平成四年一一月三〇日、大阪商銀本店から借り入れた四〇〇〇万円に係る利子割引料(平成四年一一月三〇日二八万〇〇二七円、同年一二月三一日二一万六六六七円、合計四九万六六九四円)については、その資金使途が各店舗に係る前払地代家賃の支払に充てられている(<証拠略>)ことから、各店舗に係る前払地代家賃の総前払地代家賃に占める割合(以下「資金使途構成割合」という。別表14<略>)により区分した。

イ 平成四年分の各店舗の所得率を算定する際の調整事項

A 減価償却費

原告は、減価償却費について、平成四年分の確定申告から、計算方法を定額法から定率法へ変更していたことから(別表15―1ないし9<略>)、これを定額法に換算して計算した(別表16―1ないし9<略>)。

B 地代家賃

原告は、平成五年一月分から同年一〇月分までの各店舗に係る地代家賃を、短期前払費用として、平成四年一一月に支払い、これを平成四年分の地代家賃として一括計上していたことから、平成五年一月分以降に係る地代家賃を控除して計算した。

C 減価償却資産除却損

これは原告の平成四年分における固有の必要経費であるから、各店舗の所得率を算定するに当たり考慮していない。

ウ 平成四年分の各店舗の所得率

右ア及びイから、原告の平成四年分の各店舗の所得率を算定した(別表10最下段<略>)。

<2> 平成二年分及び同三年分の各店舗の売上金額

被告が把握し得た原告の平成三年分及び平成二年分の総収入金額は、平成三年分が二億八八二三万九六一六円、平成二年分が二億〇二七〇万七九五八円である(別表8、9<略>)。その内訳は次のとおりである。

ア ビデオレンタル千日、ランジェリー千日、ステージ千日及びキャンディラブに係る各売上金額並びに雑収入の金額については、別表8<1><略>欄、別表9<1><略>欄記載のとおりであり、当事者間に争いがない。

イ 六角ビデオについては、別表7<3><略>欄記載のとおりである。これは平成四年について推計された売上金額に占める、原告が申告した六角ビデオに係る平成四年分の売上金額の割合(以下「申告割合」という。)を求め(計算方法及び数値は別表6<略>)、平成二年分及び平成三年分の申告した金額を右申告割合で割り戻す方法により算出した。

ウ ピアピアに係る収入金額については、別表8<1><略>欄記載のとおりであり、争いがない。

(二) 原告の主張

(1) 原告の売上除外は原告の営業店舗のごく一部について行っていたものにすぎないから、その余の店舗については推計の必要性はない。

被告は、売上金額については各年分の総勘定元帳、売上集計表(<証拠略>)等の信用性を認め、これに基づき把握しているにもかかわらず、売上原価、必要経費についてのみその信用性を否定し、平成四年分の所得率を用いた推計によっているが、平成二年分と平成三年分の売上原価及び必要経費については、各年分の振替伝票に基づき各取引をそれぞれ直接関係のある売上部門に配賦することにより把握が可能であり、各営業店舗に共通する経費についても各店舗の売上高の構成割合に応じて配賦することにより合理的な把握が可能であるから、推計の必要性はない。

このようにして把握される売上原価及び必要経費をもとに所得を算出すると、別表E<略>のとおりとなる。

(2) 右各年分についての被告の推計の流れを箇条書きすると次のとおりである。

<1> 平成四年分の六角ビデオ以外の店舗の売上高についての実額の把握及び六角ビデオの売上高についての乙一四号証等を用いた推計

<2> 平成四年分の全店舗の売上原価及び必要経費について実額の把握

<3> 右<1>及び<2>をもとにした各店舗の平成四年分の所得率の算出並びに右<1>をもとにした六角ビデオの平成四年分の申告割合の算出

<4> 平成二年分及び同三年分の六角ビデオ以外の店舗の売上高について実額の把握並びに六角ビデオの売上高について平成四年の申告割合を用いて申告額を割り戻す方法による推計

<5> 右<4>の各店舗分の売上高に右<3>による所得率を掛け合わせる方法による各店舗分の事業所得の推計

しかし、右<1>における六角ビデオの平成四年分の売上高の推計に関して、そこで用いられた乙一四号証の成立過程、信用性に疑問があるから、これに基づいて算出された申告割合そのものに疑問があることは前述のとおりである。

仮に、平成四年分の申告割合が正当としても、右<4>における六角ビデオの平成二年分の売上高の推計に関して、平成四年分の申告割合を用いることには合理性がない。

(3) 六角ビデオの売上除外が開始されたのは平成二年下半期以降であり、平成二年通期の売上高を推計するに当たって平成二年の申告額全部をもとに申告割合を用いて割り戻す方法には合理性がない。

平成二年の六角ビデオの売上推計は次の方法によるべきである。

<1> 上半期の売上高+下半期の売上高×申告割合=申告売上金額

<2> 通期の売上高×五〇%+通期の売上高×五〇%×申告割合=申告売上金額

<3> 通期の売上高=申告売上金額÷(五〇%+五〇%×申告割合)

つまり、平成二年分の上半期の売上高については申告割合による影響は受けないのであるから、平成二年の申告売上金額には同年上半期の売上金額実額が含まれていることになるのであり、その区分が必要となる。平成二年における六角ビデオの申告売上金額は二五六八万五四九〇円、平成四年の被告算出に係る申告割合は四九・〇三%である。被告算出による申告割合には疑義があるが、被告主張の申告割合を前提に割り戻したとしても、右算式により原告の六角ビデオ店の平成二年売上高は三四四七万〇二二七円と算出されるべきである。

六角ビデオの売上金額について、上半期と下半期をそれぞれ通期の売上高の五〇パーセントとしたのは、過年度の実績数値をもとにしたものである。別紙F<略>のとおり、多少の変動はあるものの、おおよそ上半期及び下半期の売上高は同等である。

4  本件消費税の更正処分の適法性

(一) 被告の主張

(1) 課税標準額

原告の経営する各店舗及び賃貸する物件の平成二年ないし同四年分の売上高が別表21ないし23<略>のとおりであることは、六角ビデオを除いては争いがなく、六角ビデオの売上高は前記のとおり推計されるから、原告の平成二年ないし同四年分消費税の課税標準額は、別表25<略>のとおりである。

(2) 控除対象仕入税額

原告は、平成二年分ないし同四年分の控除対象仕入税額の計算について、平成元年九月二八日付けで、東淀川税務署長に対して、消費税法(ただし、平成四年分については、平成三年法律第七三号により改正された後のもの)三七条一項の適用を受ける旨記載した届出書を提出しているので、控除対象仕入税額は、次のとおり算出される。

<1> 平成四年分

ランジェリー千日及びステージ千日は消費税法施行令(平成三年政令第二〇一号による改正後、平成八年政令第八六号による改正前のもの。以下同じ。)五七条五項二号にいう第二種事業(小売業)に該当するから、課税資産の譲渡等に係る消費税額の合計額から売上に係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額に一〇〇分の八〇を乗じ、それ以外の店舗は第四種事業(サービス業等)に該当するから一〇〇分の六〇を乗じる。これらの金額の合計が控除対象仕入税額である(別表24<略>)。

原告は、ビデオレンタル千日や六角ビデオにおいて行われる事業のうち、生テープ部門やテープ販売部門は明らかに第二種事業であり、これらにつき、見なし仕入率は八〇パーセントとされるべきである旨主張しているが、以下の理由により、失当である。

すなわち、消費税法施行令五七条四項によると、第四種事業と第四種事業以外の事業を営む事業者が当該課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等で、第四種事業に係るものであるか、第四種事業以外の事業に係るものであるかの区分をしていないものがある場合には、当該区分をしていない課税資産等の譲渡等は、第四種事業に係るものとする旨規定されている。そして、事業の種類ごとの区分がされているか否かの判断基準については、消費税法五八条、消費税法施行令七一条、消費税法施行規則(平成三年大蔵省令第三四号による改正後、平成七年大蔵省令第七五号による改正前のもの。以下同じ。)二七条によると、当該事業者が備え付け保存している帳簿に、同規則二七条一項一号ハにより同施行令二七条五項一号から四号までに掲げる事業の種類が記録されているか否か、又は、同規則二七条三項所定の小売業等で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業者の現金売上に係る資産の譲渡等については、同施行令二七条五項一号から四号までに掲げる事業の種類ごとの課税資産の譲渡等の総額が記録されているか否かにより決せられる。

また、平成三年六月二四日間消二―二九「消費税関係法令の一部改正に伴う消費税の取扱いについて」(以下「改正通達」という。)第2章第2節の1は、取引の原始帳票等である納品書、請求書、売上伝票又はレジペーパー等に事業の種類又は事業の種類が区分できる資産の譲渡等の内容を記載し、事業の種類ごとの課税売上高を計算する方法でも差し支えない旨規定している。

原告が、備え付け、保存していた帳簿である総勘定元帳(<証拠略>)には、同規則二七条一項一号ハ所定の第二種事業と第四種事業の種類が記録されていないし、また、同条三項所定の第二種事業と第四種事業ごとの課税資産の譲渡等の総額も記録されていない。また、被告は、原処分時に、ビデオレンタル千日及び六角ビデオの取引の原始帳票である売上伝票、レジペーパー等を確認することができなかったし、唯一確認することができた売上集計表は、もともと取引の原始帳票等には当たらないから、改正通達によっても、課税売上高が事業の種類ごとに区分されたものであると認めることはできない。

<2> 平成二年分及び同三年分

原告が営む事業は、消費税法(平成三年法律第七三号による改正前のもの。)三七条一項に定める「卸売業を主として営む事業者として消費税法施行令五七条で定める者」に該当しないから、課税標準額に対する消費税額に一〇〇分の八〇を乗じて算出される(別表25<略>)。

(一) 原告の主張

(1) 課税標準額

原告は平成二年ないし同四年の六角ビデオの売上高を争うので、右各年の課税標準額を争う。

(2) 控除対象仕入税額

被告は、平成四年分につき、ランジェリー千日及びステージ千日のみを第二種事業(小売業)として、その余の店舗はいずれも第四種事業(サービス業等)としているが、例えばビデオレンタル千日や六角ビデオにおいて行われている事業のうち、生テープ部門やテープ販売部門は明らかに小売業であり、これらにつき、見なし仕入率は八〇パーセントとされるべきである。

原告は、不特定多数の者に資産を現金売りする小売業をも営む者であるから、第二種事業(小売業)と第四種事業(その他事業)の各売上について、日々の現金売上の総額が整然と明瞭に記録された帳簿を備え付けておけば足りる。

原告における売上に関する帳簿等の作成の手順は次のとおりである。

<1> 売上があると、レジペーパーが作成されるが、これには各売上部門を示す数字が記入されている。

<2> 次に、売上伝票を作成し、レジペーパーから各々の数字を転記する。

<3> 売上伝票から、各売上部門別の売上を集計し、各売上部門別の売上集計表を作成する。

右のようにして作成された売上集計表(<証拠略>)は、売上を各売上部門別に記載したものであり、消費税法等の法令が要求する帳簿に当たる。

第三当裁判所の判断

一  争点1(青色申告承認取消処分の適法性)について

1  争点1(一)(所得税法一五〇条一項一号該当性)について

(一) 青色申告の承認を受けている納税者は、大蔵省令の定めるところにより帳簿書類の備付け、記録及び保存を行う義務を負っているところ(所得税法一四八条一項)、右納税者が同法二三四条の質問検査権の行使に対して正当な理由なく帳簿書類を提示しなかったときは、帳簿書類の備付け、記録、保存が大蔵省令の定めるところに従って行われていないものとして、同法一五〇条一項一号の青色申告の承認の取消事由に該当すると解するのが相当である。

原告は、本件調査は原告の意に反して強行的に行われたもので、任意調査である質問検査権の行使の域を超えたものであるから、これに対して原告が協力しなかったことをもって、所得税法一五〇条一項一号の事由には該当しない旨主張するので、この点につき検討する。

(二) 証拠<略>によると、本件調査の経緯について、以下のとおり認められる。

(1) 被告職員らは、平成五年四月二六日、原告の豊中市及び淀川区の各居宅、原告の妻が所有する旧千日事務所、原告の経営するビデオレンタル千日、ランジェリー千日、ステージ千日、六角ビデオ、キャンディラブ、原告が所有している大阪市淀川区西宮原一丁目八番三八号ハイマート第二新大阪四〇三号に臨場した。このうち、豊中市の居宅については、午前八時すぎころ、大阪国税局課税第一部資料調査第二課(以下「資料調査二課」という。)所属の田中耕平主査ほか四名が臨場した。原告は就寝中であったが、原告の妻に起こされて玄関先で被告職員らと応対し、被告職員らが国税局の者である旨述べたので、身分証明書の提示を求めた。被告職員ら全員は身分証明書を提示し、原告が、その氏名、生年月日、番号等を書き写している間に、被告職員らは、居宅内の現物確認調査を開始した。この間、本件調査の主担当者であり、原告の納税地である淀川区の居宅の調査に赴いていた資料調査二課の渡辺義則実査官ほか二名が、原告が豊中市の居宅にいるとの連絡を受けて、豊中市の居宅に臨場し、原告の聞き取り調査をした。原告は、午前一〇時頃、顧問税理士である細谷に電話して相談したが、細谷は当日は調査に立ち会えない旨述べた。

(2) 原告は、午前一一時頃、旧千日事務所に出勤しようとしたが、渡辺実査官ほか二名が原告に要請して原告の車に同乗した。旧千日事務所に向かう車内では、助手席に座った渡辺実査官がダッシュボードの中を調べた。

(3) 旧千日事務所では、資料調査二課の板垣正三主査ほか四名の職員が待機していたが、原告が鍵を忘れたと述べたため、渡辺実査官が大阪国税局に指示を仰いだところ、ビデオレンタル千日に出勤した原告の従業員である長谷川美佐子が旧千日事務所の鍵を持っており、被告職員が旧千日事務所に同行するとの連絡を受けた。

間もなく、長谷川が資料調査二課の田端正彦実査官に連れられて旧千日事務所に到着し、渡辺実査官らは原告の了解を得て、旧千日事務所に立ち入った。同事務所内では原告の事業内容についての聞き取りを行うとともに、当初は長谷川の、原告の従業員である天谷誠志が出勤してからは長谷川、天谷両名の立会の下で、現物確認調査が実施され、平成二年の振替伝票、同三年分及び四年分の振替伝票及び総勘定元帳等の提出を受けた。

その際、「秘(売上仕訳六角店)2・6・29現在」と題する文書(<証拠略>)、(以下「指示文書」という。)及び平成四年八月から同五年三月までの「キャンディラブ売上・点検表」と題する文書(<証拠略>)が発見された。

前者について、渡辺実査官は、後記認定のとおり、六角ビデオにおいて午後六時を基準に売上が区分管理されている旨の連絡を受けていたので、原告に確認を求めたが、原告は、私は知らない、筆跡も知らないと繰り返した。後者については、原告はキャンディラブにおける売上除外を認めた。

西村実査官は、古い調査対象年分の総勘定元帳、請求書、領収書等の原始資料がないことに気付いたので、長谷川に対して、どこにあるのか質問したところ、長谷川は「ここになければ『塚本』だと思います。」と述べたので、西村実査官が「『塚本』とはどこですか。」と尋ねたところ、原告は、「しゃべるな。」「聞きたいことがあるなら私に聞きなさい。」と叫ぶように話し、従業員に対する聞き取り調査を拒否した。

(4) その後、渡辺実査官らは原告とともに淀川区の居宅に赴き、同居宅での現物確認調査に着手したが、原告が玄関の鍵が開かないと述べたので、その日は調査を実施できなかった。

(5) 一方、同日午前、資料調査二課の大坂隆主査ほか二名は、六角ビデオに臨場していたが、開店していなかったので待機していたところ、午前九時三〇分頃、六角ビデオの従業員である泉が出勤したので、身分証明書を提示し、原告の税務調査を実施したい旨述べると、泉は、これに応じ、大坂主査らを店内に入れた。

福居実査官は、平成五年一月、二月及び四月の売上の公表分と除外分の件数が記録された売上点数集計表(乙一四の一六枚目、一八枚目、二一枚目、以下「売上点数集計表」という。)及び係数表(同一七枚目、一九枚目、二〇枚目、以下「係数表」という。)を発見した。午前一〇時頃、兼子が出勤したので、大坂主査らは、身分証明書を提示し、原告の税務調査への協力を求めたところ、兼子はこれに応じ、六角ビデオの売上は、開店から午後六時までの分と午後六時から閉店までの分に区分して管理されている旨説明した。

福居実査官が兼子に対し、平成五年一月以前の売上点数集計表の保管場所を尋ねると、兼子は、同人の居宅(京都市中京区三条通御幸町通のマンション)に保管されている旨述べたので、大坂主査らは兼子とともに同人の居宅を訪れ、表紙が緑色のファイルに綴じ込まれた部門別売上点数集計表やそのグラフ(乙一四の二四ないし二九枚目、五四枚目)等の提出を受けた。兼子は、部門別売上点数集計表やそのグラフは、将来独立して同種の事業をする場合に備え、客足の流れや商売のノウハウを勉強するために作成したものである旨述べた。福居実査官は、右の緑色ファイルに売上点数集計表、係数表等を挟み込み、一冊の「緑ファイル」として、預り書(<証拠略>)を作成し、兼子に交付した。

大坂主査らは、六角ビデオに戻った後、同店の店長松林に電話して、同店に出勤するよう説得したところ、同人は同店に出勤し、六角ビデオの売上は、原告の指示により、五年前から、開店から午後六時までの売上と午後六時から閉店(午後一〇時三〇分)までの売上に区分して売上伝票を作成し、前者の売上金は毎日原告名義の銀行口座に振り込むが、後者の売上金とレジペーパー等は、松林が自宅で保管した上、毎週木曜日に原告に手渡している旨を説明した。

(6) 渡辺実査官ほか四名は、当初は淀川区の居宅に臨場したが、閉戸不在で調査できなかったため、管理人から緊急連絡先電話番号を聞き取り、その名義人を調査したところ、大阪市淀川区宮原一丁目一九番一一号ネオハイツ新大阪に居住する濱名久美子宅(以下「濱名宅」という。)であることが判明した。この後、渡辺実査官ほか二名は、前記のとおり、豊中市の居宅に向かったが、斉藤実査官及び平江実査官は、濱名宅に臨場した。濱名は調査に応じ、黒のアタッシュケースの中を確認した。濱名は、濱名宅の権利証は信用組合大阪商銀本店営業部の貸金庫に保管されていると述べたので、斉藤実査官らは濱名とともに同店に臨場したが、濱名が貸金庫の鍵を持っていなかったので開扉できなかったため、鍵を探しに濱名宅に帰る途中、濱名は立ち去り、斉藤実査官らが濱名宅に戻っても閉戸不在のため調査できなかった。

(7) 同月二七日午前九時頃、渡辺実査官ほか二名は、豊中市の居宅に臨場し、原告とともに淀川区の居宅に臨場した。ところが、淀川区の居宅での調査開始後、約一時間経過したところ、原告が突然体調不良を訴えたので、渡辺実査官らは、現物確認調査を中止して淀川区の居宅から全員退出した。原告は、最寄りの共和会北大阪病院内科で点滴治療等の措置を受け、渡辺実査官らに同行されて豊中市の居宅に帰宅したため、淀川区の居宅の調査は中止となり、後記のとおり、後日においても実施できなかった。

同日、田中主査らは濱名宅に臨場したが、閉戸不在のため、調査できなかった。

(8) 同月二八日、渡辺実査官らが豊中市の居宅に臨場すると、原告は、本件調査の際に現金三〇〇万円と大切な書類がなくなったと主張して、捜査に協力しなかった。

(9) その後、被告職員らは、本件各更正処分に至る約半年の間、原告に対して、再三にわたり連絡をとることを試み、平成二年分の総勘定元帳等、未提出の帳簿書類等の提出を求めたが、原告は、平成五年六月二四日に細谷税理士及び宮田和義税理士立会のもとで渡辺実査官らと面接したほかは被告職員との面接に応じず、右面接時の被告職員らの質問に対する回答文書を同年八月一二日に細谷税理士から提出させたほかは、一切資料を提出せず、従業員にも調査に協力させなかった。

(三) 以上認定の事実によれば、本件調査のうち、平成五年四月二六日に行われた豊中市の居宅における調査や右居宅から旧千日事務所に向かう車内の調査については、かなり強引に行われた嫌いがなくはないが、原告の静止に逆らって調査をした事実までは認められない。それ以外の調査については、すべて原告又は原告の従業員の承諾のもとで行われたものであることは明らかである。原告は本件調査の際に現金三〇〇万円及び書類が被告職員らに盗まれた旨の主張をするが、右事実を認めるに足る証拠はないばかりか、仮に右のような事実があったとしても、調査の違法性とは別個の問題というべきである。そして、原告は、その後約半年にわたり、被告職員らが帳簿書類の提出を求めてもこれに応じなかったのであるから、原告が帳簿書類を提示しなかったことには正当な理由はないといわざるを得ず、所得税法一五〇条一項一号に該当する事由があるというべきである。

2  争点1(二)(所得税法一五〇条一項三号該当性)について

六角ビデオ及びキャンディラブにおいて売上除外が行われていた事実は争いがなく、これは、所得税法一五〇条一項三号に該当する事実である。

原告は帳簿の記載全体の信用性を疑わせるには足りないから同号に該当しない旨主張するが、同号は、帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載することと、「その記載事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること」との間を「その他」でつないでいるのであるから、通常の法令用語の用い方からすれば、帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載すれば同号に該当するものと解されるし、本件における売上除外の程度(後記認定のとおり、六角ビデオについては売上高の四九・〇三パーセントしか申告していなかったものと認められる。)、期間(後記認定のとおり、六角ビデオの売上除外は、遅くとも平成二年上半期から本件調査の行われた平成五年四月まで継続して行われていたものと認められる。)、巧妙性(売上伝票、レジペーパーを午後六時の前後で別個に管理するので、売上除外を発見するのは容易ではない。)からすると、帳簿の記載全体の信用性を疑わせるに足るものであるというべきであるから、いずれにしても、原告の主張は採用できない。

3  そうすると、原告に対する青色申告承認取消処分は適法である。

二  争点2(平成四年分の所得税に係る更正処分等の適法性)について

1  平成四年分の原告の所得のうち、不動産所得については当事者間に争いがなく、事業所得についても、六角ビデオ以外の店舗の売上金額又は収入金額(別表4の<3><略>以外の売上(収入)金額)は争いがない。

2  前記認定の事実に<証拠略>を総合すると、原告は、本件調査に協力せず、特に、六角ビデオについては午後六時から閉店までの売上高が除外されていた上、真実の売上高を把握する売上点数集計表や原始帳票も提出されなかったこと、平成四年分の総勘定元帳(<証拠略>)には取引金額及び年月日の記載はあるが、取引先の住所・氏名の記載は一切なく、また、振替伝票(<証拠略>)には取引先名が記載されているものもあるが、取引先を特定させる住所又は電話番号等の記載はなく、原告の取引先のすべてを反面調査することはできなかったこと、その結果、被告は、原告の平成四年分事業所得につき実額を把握することができなかったことが認められ、これによると、推計の必要性が認められる。

3  平成四年分の六角ビデオの売上金額の推計の合理性について

(一) 被告の主張する推計の方法は、開店から午後六時までの売上点数と売上高を記載した売上集計表から、ルーム部門、テープ販売部門等の部門別に売上点数一点当たりの平均売上金額を算出して、これを部門別平均単価とし、これに、部門別売上点数集計表に記載された開店から閉店までの各部門合計点数を乗じることにより、開店から閉店までの売上金額を推計するというものである。

原告の経営する店舗数が多く、各店舗の事業内容も多岐にわたり、かつ、特殊なものが多いことに照らすと、本人比率による推計を行うことには十分な合理性があるし、<証拠略>によれば、売上点数集計表、部門別売上点数集計表はいずれも正確に記載されたものと認められる(詳しくは、後記(二))から、右の方法による推計には十分合理性があるものと認められる。もっとも、開店から午後六時までの部門別平均単価と午後六時から閉店までのそれとの間に有意の差がある場合は、右の方法によることには不合理が生じるといえるが、右の有意の差があることを認めるに足る的確な証拠はない。

(二) 原告は、乙一四の成立過程、信用性に疑問があり、同号証に記載された六角ビデオのルーム部門やテープ販売部門の売上が物理的に不可能である旨の主張をする。

(1) しかし、まず、部門別売上点数集計表と売上点数集計表が同じ緑ファイルとしてまとめられた理由は前記認定のとおりであり、不自然な点は認められない。

(2) 次に、六角ビデオの売上点数集計表(乙一四の一六枚目、一八枚目、二一枚目)に記載されたルーム部門の売上点数が正確であることは、レジペーパーによって裏付けられる。

すなわち、平成五年四月の売上点数集計表(乙一四の二一枚目)によれば、同月二二日におけるルーム部門の売上点数は、開店から午後六時までが四〇点、午後六時から閉店までが一三点とされているところ、同日付けの売上伝票の一通(乙一五の二枚目)には、ルーム部門の売上が、区分1(一時間テープ)が一九本、区分2(三〇分テープ)が一本、区分3(四〇分テープ)が三本、区分4(五〇分テープ)が一三本、区分5(一時間を超えるテープ)が四本の合計四〇本が記載されており、この四〇という数字は同日の開店から午後六時までの売上点数として売上点数集計表に記載された数字と一致する。そして、六角ビデオのレジペーパーには、右の区分が記載されるようになっており、同日付のレジペーパーのうち、乙一五号証の六枚目から九枚目の部分(冒頭にAと記載されたNo.1からNo.39まで)に記録された売上のうち区分1ないし5の売上を集計すると、右売上伝票どおりの各区分の売上があったことが認められる。

同様に、同日付けの売上伝票のもう一通(乙一六の四枚目)には、ルーム部門の売上が、区分1が八本、区分3が一本、区分4が四本の合計一三本が記載されており、この一三という数字は同日の開店から午後六時までの売上点数として売上点数集計表に記載された数字と一致する。そして、同日付のレジペーパーのうち、乙一六号証の八枚目から一〇枚目の部分(冒頭にAと記載されたNo.1からNo.30まで)に記録された売上のうち区分1ないし5の売上を集計すると、右売上伝票どおりの各区分の売上があったことが認められる。

同月二三日ないし二五日の午後六時から閉店までの売上についても、売上点数集計表(乙一四の二一枚目)記載の点数(三〇、三七、二六)は、売上伝票(乙一六の二五枚目、四六枚目、七〇枚目)記載の各区分毎の売上の合計本数と一致し、各区分毎の売上数は、レジペーパー(乙一六の二九枚目ないし三二枚目、五四枚目ないし五八枚目、七八枚目ないし八二枚目)に記録された売上と一致することが認められる。

以上の事実からは、売上点数集計表に記載されたルーム部門の点数は、レジペーパーに記録された売上を集計した売上伝票の数字を正確に転記したものであると認められる。

また、以上の事実に、平成五年一月分及び二月分の売上点数表(乙一四の一六枚目、一八枚目)、平成四年一月から同五年二月までの部門別売上点数グラフ(乙一四の五四枚目)、部門別売上点数集計表(平成四年一月ないし六月分が乙一四の二五枚目、同年七月ないし九月分が同号証の二六枚目、同年一〇月ないし一二月分が同号証の二七枚目、平成五年一月分及び二月分が同号証の二八、二九枚目)における売上点数の記載を総合すると、これらの表やグラフに記載された売上点数は、レジペーパーに記録された売上を集計した売上伝票の数字を正確に記載したものであると推認される。

そして、これらの表やグラフによると、六角ビデオにおいては、平成四年一月から同五年二月までの間、ルーム部門については、月平均六三点(平成五年二月)ないし七五点(平成四年八月)の売上点数があり、平成五年一月、二月、四月については、開店から午後六時までは二一点ないし六一点、午後六時から閉店までは一二点ないし五〇点の売上があったものと認められる。

ルーム部門の売上に物理的限界があるとの原告の主張は、ルーム部門を利用する客は、一本のテープを借りてその最初から最後までを鑑賞することを前提とするものであるが、レジペーパーの記載からは、一度に複数のテープが借りられることも少なくないことが認められるし、客が録画されている映像のすべてを鑑賞するとは限らないから、前記のような売上点数になることは何ら不自然、不合理なものではない。

したがって、六角ビデオのルーム部門の推計売上が物理的に不可能なものであるとの原告の主張は採用することができない。

これに対し、原告は平成六年一月ないし六月の売上実績が被告の主張より著しく少ない旨主張するが、対象となった時点も異なるし、原告の主張する売上実績を裏付ける資料もないから、ルーム部門の売上が過大であるとの原告の主張は採用できない。

(3) 原告は、六角ビデオのテープ販売部門の売上についても過大である旨の主張をする。しかし、テープ販売部門についても、前同様、売上点数表、部門別売上点数グラフ、部門別売上点数集計表に記載された売上点数は、レジペーパーに記録された売上を集計した売上伝票の数字を正確に記載したものであると推認される。

そして、これらの表やグラフによると、六角ビデオにおいては、平成四年一月から同五年二月までの間、テープ販売部門については、月平均一四・三点(平成五年二月)ないし一九点(平成四年一月)の売上点数があったものと認められる。

平成六年一月ないし六月売上実績をもとにした原告の主張が採用できないことは、ルーム部門と同様である。

4  売上原価については、当事者間に争いがない。

5  必要経費は、利子割引料を除いて当事者間に争いがない。利子割引料のうち、昭和六三年八月の一億円の借入れに係る部分については、右借入れが事業用資産の購入のためのものであることを認め得る証拠はないから、必要経費に算入することはできないというべきである。

原告は、利子割引料について、被告の本訴における主張と審査請求手続における主張が異なることを論難するが、課税処分取消訴訟においては、課税庁は処分時に存在する事情のすべてを主張することができるから(いわゆる総額主義)、原告の主張は理由がない。

6  以上によれば、原告の平成四年の事業所得の金額が別表3及び4<略>の所定欄記載のとおりであるとしてされた同年の更正処分は適法である。また、原告が同年の六角ビデオの売上の一部を除外して帳簿書類に記載し、これに基づいて納税申告書を提出した行為は、国税通則法六八条一項所定の重加算税の課税要件に該当すると認められるから、右更正処分に基づき納付すべき税額につきされた重加算税及び過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。

三  争点3(平成二年分及び同三年分の所得税に係る更正処分等の適法性)について

1  被告は、平成四年分と同様の理由により、平成二年分及び同三年分の事業所得について実額を把握することができなかったことが認められるから、推計の必要性を肯定することができる。

原告は、被告が六角ビデオ以外の店舗の売上について総勘定元帳、売上集計表の記載の信用性を認めているのであるから、売上原価及び必要経費については総勘定元帳や振替伝票の記載に基づいて実額を把握することができ、推計の必要性はないと主張する。しかし、六角ビデオ以外の店舗の売上についての被告の主張は総勘定元帳等の記載に基づく原告の主張と一致しているものの、これは総勘定元帳等の記載の信用性を全面的に認めたことによるものではなく、売上原価及び必要経費については被告が調査に基づいてその正確性を確認することができなかったものと認められるから、原告の右主張は採用できない。また、原告の主張する実額はその裏付けが明らかでなく、採用することができない。

2  被告が主張する推計の方法は、原告が経営する各店舗の平成四年分の所得率を求めて、これを平成二、三年分の各店舗の売上金額に乗ずることにより事業所得を推計するというものである。原告が経営する各店舗の営業形態は平成二年ないし同四年の間に特段の変化が生じたものとは認められないから、右各年の所得率は概ね等しかったものと推認され、右の推計方法には合理性が認められる。

3  平成四年分の所得率については、<証拠略>を総合すると、被告主張のとおり認めることができる。

4  六角ビデオの売上高については、被告の主張する推計方法は、平成四年の申告割合(六角ビデオについて推計売上金額に占める申告売上金額の割合)を求め、平成二年分及び平成三年分の申告売上金額を右申告割合で割り戻すというものである。

(一) 指示文書(<証拠略>)によれば、平成二年六月二九日現在は、午後四時以降閉店までの売上が除外されており、以後、売上を区分する時刻が徐々に遅くなることが予定されていたことが認められるから、平成二年及び三年については、午後六時で売上を区分していた平成四年当時とは申告割合が異なることが考えられる。そうすると、平成二年、三年分の売上高を推計するのに、午後六時以降の売上を除外した平成四年の申告割合を用いることの当否に疑問が生じなくもないが、午後六時より前の時刻以降の売上を除外していた時点での申告割合は、午後六時以降の売上を除外した平成四年の申告割合より小さいものと推認されるから、平成四年の申告割合で割り戻して売上金額を推計することは、原告にとって有利になるので、推計の合理性を否定するものと考える必要はなく、すくなくとも平成四年の申告割合で割り戻して推計した売上金額は存在したことは確実であるというべきであるから、この推計方法には合理性があるというべきである。

(二) 平成二年及び同三年について、原告の主張する推計方法は、六角ビデオにおける売上除外が行われるようになったのは平成二年の下半期(七月ないし一二月)以降であること及び六角ビデオにおける上半期の売上と下半期の売上が等しいことを前提とするものである。しかし、前者については、指示文書の右肩には「2・6・29現在」と記載されているものと認められ、売上除外の経理処理が同日以降に行われる趣旨というよりも、同日現在の経理処理方法を記載したものと認められること、松林は本件調査の五年前から売上除外をしている旨説明したと認められることからすると、むしろ、平成二年の上半期には売上除外がされていたものと認められるし、後者についてはこれを認めるに足る的確な証拠がない。

5  六角ビデオを除く各店舗の売上(収入)金額及び雑収入金額については争いがない。

6  以上によれば、原告の平成二年及び同三年の事業所得の金額が別表3、8及び9<略>の所定欄記載のとおりであるとしてされた右各年の更正処分は適法である。また、原告が右各年の六角ビデオの売上の一部を除外して帳簿書類に記載し、これに基づいて納税申告書を提出した行為は、国税通則法六八条一項所定の重加算税の課税要件に該当すると認められるから、右各更正処分に基づき納付すべき税額につきされた重加算税及び過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。

四  争点4(消費税の更正処分等の適法性)について

1  六角ビデオを除く店舗及び賃貸物件についての売上高は当事者間に争いがなく、六角ビデオの売上高が被告主張の額のとおりと推計されることは既に述べたとおりである。

2  不動産貸付及び不動産譲渡による売上高については当事者間に争いがない。

3  平成四年分の控除対象仕入税額について

(一) 被告は、ランジェリー千日及びステージ千日については第二種事業に該当するものとし、右以外の店舗については、第四種事業に該当するものとして控除対象仕入税額を算出すべきであると主張するのに対し、原告は、ビデオレンタル千日及び六角ビデオにおける事業のうち、生テープ部門やテープ販売部門は第二種事業であり、見なし仕入率は八〇パーセントとされるべきである旨主張する。

消費税法施行令七一条で定められている帳簿の記録事項は、消費税法施行規則二七条三項によれば、小売業その他これに準ずる事業で不特定かつ多数の者に資産の譲渡等を行う事業者の現金売上に係る資産の譲渡等については、課税資産の譲渡等(原告は消費税法三七条一項の規定の適用を受ける事業者なので、第一種事業から第四種事業の種類ごとの課税資産の譲渡等)と課税資産の譲渡以外の資産の譲渡等に区分した日々の現金売上のそれぞれの総額で足りるものとされている。

ところで、ビデオレンタル千日の売上集計表(<証拠略>)には、売上区分として、「ROOM」「レンタル」「延滞」「生テープ」「会員」のほか、「A」「B」とのみ記載のあるものと空欄のものがあり、第一種事業から第四種事業の種類ごとの課税資産の譲渡等と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等が区分されているとはいい難い。したがって、右売上集計表は、消費税法施行令七一条の要件を備えた法定帳簿であるとはいえない。

また、平成四年のビデオレンタル千日の売上については、レジペーパー等の原始帳票が提出されていないから、改正通達所定の方法による事業の種類ごとの課税売上高の計算が行われたと認めることはできない。

そうすると、消費税法施行令五七条四項によれば、ビデオレンタル千日における課税資産の譲渡等は第四種事業に係るものとされるから、控除対象仕入税額は、課税資産の譲渡等に係る消費税額の合計額から売上に係る対価の返還等の金額に係る消費税額の合計額を控除した残額に一〇〇分の六〇を乗じるべきであり、原告の主張は採用できない。

六角ビデオの売上集計表(<証拠略>)についても同様の理が当てはまるが、そもそも、六角ビデオの売上集計表は、午後六時以降閉店までの売上が除外されたものであるから、課税資産の譲渡等を正確に記録しているものということはできない。

(二) そうすると、原告の主張は採用できない。

4  平成二年及び同三年の控除対象仕入税額については争いがない。

5  以上によれば、平成二年ないし同四年の消費税の更正処分はいずれも適法である。また、原告が右各年の六角ビデオの売上の一部を除外して帳簿書類に記載し、これに基づいて納税申告書を提出した行為は、国税通則法六八条一項所定の重加算税の課税要件に該当すると認められるから、右各更正処分に基づき納付すべき税額につきされた重加算税及び過少申告加算税の賦課決定処分も適法である。

五  結語

以上の認定、判断によれば、原告の本訴請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条、民訴法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 山下郁夫 青木亮 山田真依子)

別紙AないしF<略>

別表1ないし25<略>

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